入居・原状回復工事区分A工事・B工事・C工事をわかりやすく解説
- 2022.5.11
賃貸オフィスや賃貸テナント物件に入退去する際に、必ずついて回るのが内装工事です。
賃貸テナント物件の内装工事にはA工事・B工事・C工事と種類があるのですが、混乱されている方も多いので、わかりやすく解説いたします。
目次
A工事とは
A工事とは甲工事とも呼ばれ、建物躯体部分の工事のことを指します。
具体的には、ビル外壁、耐震補強工事、共用部の玄関、エレベーター、トイレなどの工事が該当します。
ポイントは共用部です。
賃貸物件内にトイレがある場合はA工事とはならずB工事となることが大半ですのでご注意ください。
A工事の費用は賃料に含まれている
A工事の費用は賃料に含まれているため、入居工事や原状回復工事でA工事の費用を負担することはありません。
A工事の資産区分
A工事の資産区分は建物オーナーで、会計上も建物オーナーが処理します。
B工事とは
B工事とは乙工事とも呼ばれ、賃貸物件の中で行う工事です。
建物に影響があると建物オーナーや管理会社が判断した部分がB工事に該当します。
例えば、トイレや水回りの位置変更、エアコンなど空調機器の移設や増設、部屋を仕切る造作壁やドアの設置・撤去などがB工事です。
B工事の範囲は賃貸借契約書で定める
どの部分の工事がB工事に該当するかは物件によって異なり、賃貸借契約書で取り決めます。
なお、大手ディベロッパーのビルの場合、B工事の割合が高くなります。
B工事はトラブル防止のため指定業者になることが多い
オフィスを含めたテナント物件の多くは、B工事を行う業者を指定しています。
建物の価値を維持するためと、ビル全体の安全性、耐震性に影響を及ぼさないようにするためです。
建物に影響を及ぼさないようにするため、B工事は工事項目が多くなる傾向があります。
大手ディベロッパーのビルの場合、ゼネコンが指定業者となるため、工事費用が高くなることが多いです。
法的には、本来はB工事の発注者は建物オーナー
- トイレの位置を変更したい、修繕(リフォーム)したい
- 水道を増設したい
- 部屋を仕切りたい(消防設備や空調設備の増設)
- 電気を多く使いたい(電気容量の変更)
上記の例のように、入居者の使い勝手や目的に応じて行うB工事ですが、法的には建物オーナーが工事の発注者となり、支払いは入居者となります。
発注するのが建物オーナーだから、業者が指定できるというわけです。
しかし一般的には、テナント側が発注者となることが多いです。
B工事の資産区分・所有権
B工事で工事を行った場合、建物と一体化するため、民法上の資産(所有権)は建物オーナーとなり、会計上の資産は入居者(テナント)となります。
所有権は建物オーナーとなりますが、会計上の固定資産、減価償却処理などは入居者で行う形となり、償却資産税も入居者の負担となります。
B工事で設置したものは移転先に持っていけない
入居B工事で設置した物品の所有権は建物オーナーにありますから、基本的には移転先などに持ち出すことはできません。
持ち出すことができないため、固定資産(償却資産)として資産計上しているものは、原状回復で「固定資産除却損」として処理し、その他の費用は修繕費として処理します。
ただし、上場企業や連結子会社の場合は、資産除去債務を使って原状回復費用を処理しますので、ご注意ください。
C工事とは
C工事とは丙工事とも呼ばれ、賃貸テナント内で行う工事のひとつでA工事やB工事に該当しないものがC工事です。
物件によって異なりますが、壁紙の張替え、照明器具の交換、LANや電話の配線工事、分電盤から先の電気工事、OAフロアの設置(物件や内容によってはB工事)などがC工事にあたります。
C工事は入居者側で工事業者を選定できますので、相見積もりで比較検討することが可能です。
C工事の資産計上は所有権を含めて入居者側
C工事はすべて入居者による工事となるため、民法上も会計上もテナント側の資産となります。所有権もテナント側です。
オフィスやテナントを移転する際も自由に持ち出すことが可能です。
C工事とはいえ工事許可は必要
C工事だからといって、勝手に工事をすることはできません。
工事内容によっても異なりますが、工事前に管理会社に連絡し調整をするようにしましょう。
A工事・B工事・C工事の区分は物件によって異なる
どの工事がB工事で、どの工事がC工事なのか、工事区分は物件によって異なります。
オフィス移転前はC工事であった内容が、移転後はB工事となることも多々ありますし、同じ建物であっても同じ管理会社であっても、物件ごとに工事区分が異なる可能性もあります。
工事区分を間違えてしまいますと、工事費用の上昇、工事やり直しなど様々な問題が出てくる可能性がありますので、賃貸借契約書と特約の内容をしっかりと確認し、不明点があるのであれば、管理会社や建物オーナーと話し合い、明確にし工事区分表を作成するようにしましょう。
原状回復工事にもB工事とC工事がある
原状回復工事の種類はひとつだけと誤解されることもありますが、入居工事でB工事とC工事をするように、原状回復工事(原復工事)にもB工事とC工事があります。
B工事とC工事を一緒にするかしないか
B工事とC工事のように分けず、一括して工事を行った方が安くなる可能性もありますし、逆に分けた方が安くなる可能性もあります。
時間と手間、工事期間なども考える必要がありますが、原状回復B工事とC工事をどのように実施するのがベストなのか、検討することが大切です。
居抜きで退去という手も
建物オーナーの許可が必要ですが、原状回復工事をせずに居抜きでオフィスを退去する方法も無くはありません。
退去までの期間内に次のテナントを探す必要がある、会計上、資産譲渡する必要がある、原状回復義務を確実に引き継ぐ必要があるなど面倒な部分もありますが、資源の無駄遣いが減るなどのメリットもあるため、増えてはいます。
退去までに時間的余裕があるのでしたら、検討してもいいかもしれません。
高いB工事費用を適正にする方法
ほとんどのテナント物件のB工事は業者を指定しており、指定業者1社しか工事できないため、市場原理は働かず高い金額になることが大半です。
建物オーナーの立場からすると、建物の価値や状態が維持、保証できる工事をしてくれれば良く、金額についてはタッチしません。
入居工事、修繕工事、原状回復工事に関係なく、下記の流れでチェックし、少しでも安くなるようにしていきましょう。
工事区分を賃貸借契約書で確認
どの工事がA工事なのか、B工事なのか、C工事なのかを賃貸借契約書で確認します。
見積書の項目を一つひとつ確認
時間がかかりますが、工事業者から出された見積書の内訳を一つひとつ丁寧に確認していきます。
- 工事区分はあっていますか?
- 間違ってA工事は入っていないでしょうか?
- 工事が重複していませんか?
- 工事の範囲は適切ですか?
- 不要な工事は入っていませんか?
- 各項目の金額は適正ですか?
- 廃棄物の処理は適切ですか?
なお、工事業者から詳細な説明を受けても工事内容を把握できないこともあります。
工事内容が把握できませんと、価格交渉は困難なものとなりますので、見積書を確認していて手に負えないと感じたのなら、B工事の査定から交渉までしてくれるコンサルティング会社に依頼する方法も検討しましょう。
価格交渉
見積書の項目に問題があったり、各項目の金額が適正ではない場合は減額交渉することが可能です。
工事区分の違いは比較的簡単ですが、各項目の金額交渉は、現在の相場を踏まえていないと、なかなか通らないでしょう。
また、価格交渉する時間も考えておく必要があります。
交渉が長引くと、入居工事であれば入居するまでの期間が延びてしまいますし、原状回復工事であれば退去までに間に合わないことに繋がります。
多くの企業様は高いと感じながらも交渉材料が少ない、時間的余裕がないなどの理由で交渉することなく工事を依頼しているのが現状です。
B工事の価格査定やコンサルティングを依頼するときの注意点
お伝えしたように、不動産と建設業に慣れていなければ、価格交渉が頓挫してしまいます。
専門家に価格査定からコンサルティングまで依頼することも可能ですが、原状回復を含むB工事の価格査定、コンサルティングを依頼する場合は、下記に注意しましょう。
- 完全成果報酬型でない場合、減額できずトータル費用が高くなる可能性がある
- ビル特有ルールを知らないと、交渉に失敗する恐れがある
- 管理会社や建物オーナー(大手ディベロッパー)との関係性が維持できるコンサルティングができるかチェックしておく
- 日程の遅れによる違約金など原状回復工事後費用が出ないようにできるか確認する
株式会社Leasing Innovation(リーシングイノベーション)は、様々なビル特有のルールを熟知した豊富な経験を持つ担当者が、査定から減額コンサルティングまで行っております。
もちろん、完全成果報酬型です。
まずは、お気軽にお問い合わせください。
この記事のまとめ
A工事、B工事、C工事とは?
原状回復工事は何工事?
B工事はテナント側で業者を選定することができないので、高額になりがちです。 指定業者を変更せずに原状回復工事費用を削減することは可能?
高額なB工事はどうすれば安くなる?
この記事を書いた人