原状回復工事の相場は坪3万円~30万円と差が大きい。見積もりの適正価格や減額方法は?OWNEDMEDIA

原状回復工事の相場は坪3万円~30万円と差が大きい。見積もりの適正価格や減額方法は?

  • 2022.5.11
原状回復工事の相場は坪3万円~30万円と差が大きい。見積もりの適正価格や減額方法は?

原状回復工事の相場は坪3万円~30万円。平米に換算すると9千円~9万円と大きく差があります。

単純計算で500坪(1,653平米)の面積で原状回復工事相場が坪10万円だとしたら5,000万円、坪5万円だとしたら2,500万円というように、原状回復工事の相場は大きな価格差があります。

一般的に小規模オフィスは安め、大規模オフィスやハイグレードビルは高めの相場ですが、原状回復工事の相場に差が出る理由と、削減する方法もお伝えいたします。

事務所移転、店舗移転をお考えで原状回復費用を削減したいのでしたら、ぜひ最後までお読みください。

原状回復の相場(坪単価)に差がでる理由

原状回復の相場(施行目安単価)に差がでてしまう代表的な理由についてお伝えします。

オフィス面積が大きければ高くなる

オフィスの面積が大きければ大きいほど、原状回復の相場は高くなりがちです。

大規模オフィスになるほど、工事管理費などが嵩むといった理由があります。

<原状回復工事、坪単価の目安>

  • 小規模オフィス:坪単価3万円~6万円
  • 中規模オフィス:坪単価6万円~9万円
  • 大規模オフィス:坪単価9万円~15万円
実際にあった原状回復工事の坪単価

飲食店・店舗は高くなる傾向

飲食店の場合は、水回りや空調関係を変更していることが多く、退去する際は入居した時点と同じ配置に戻す工事が必要です。

オフィス併設のショールームや研究室を設けている企業の場合も、同じ理由で原状回復工事費用が高くなってしまいます。

また、飲食店や店舗の場合、スケルトン状態に戻す契約となっていることも飲食店や店舗の原状回復相場を押し上げている理由のひとつです。

内装の状態で変わる

下記のような内装がある場合、原状回復工事費用は高くなります。

  • 従業員のモチベーション維持や社内の空気感をつくるために、内装にこだわっている。
  • 来客用会議室、重役室、ショールーム、クリニックのレントゲン室、研究室を設けている。
  • 電動昇降式のシャンデリアがある。
  • 暖炉がある。
  • 個室が多い。(造作壁やドアが多い)

反対に、入居工事をほぼしていない事務所や、間仕切り壁やドアを設けていないオープンオフィスでしたら、原状回復費用は抑えられます。

また、パーティションを使って間仕切り壁としていた場合は、造作壁よりも単価は安くなります。

資材・処分費は変動する

建設資材や撤去した壁やドア、電線、ダクトなどの処分費は、毎月変動します。

オフィスや店舗のある場所が産業廃棄物処理施設から遠ければ、輸送費も高くなります。

さらに、地域による工賃の差もあります。

全く同一の大きさで同じ内装であったとしても、原状回復費用は同額とはならないのです。

ビル特有のルールで高くなる

ハイグレードビルに多いのですが、原状回復費用に入退館システムのシステム変更費用や、空調コントロールのソフト変更などが加算される場合があります。

昔ながらの雑居ビルは、契約内容が古いことが多く、原状回復でシステム変更が必要になるケースも稀ですので、新しいビルほど、原状回復工事の相場は高くなると認識して間違いありません。

市場原理が働かない指定業者の存在

オフィスや店舗などのテナント物件は、賃貸借契約で入居工事や原状回復工事などの業者を指定しているケースが大半を占めます。

業者指定となるため、市場原理は働かず価格は高くなりがちです。

工事業者が指定されていても、交渉資料を準備し減額交渉することで費用を削減することは可能です。諦める必要はありません。

原状回復工事の相場は曖昧でトラブルも多い

原状回復工事の相場は曖昧でトラブルも多い

世の中全般として、曖昧な契約にはトラブルがついてきます。

以前は原状回復も曖昧な契約であることが多くトラブルが多発していました。トラブルを少なくするため、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定め、2020年4月1日に施行された改正民法で明確化されました。

原状回復ガイドラインが適用になるケース

国土交通省が定めた原状回復ガイドラインは、住居用として作成されており、事業用であるオフィスや店舗は除外されています。

しかし、過去の判例を調べてみると、マンションの一室を事務所にしていた原状回復の裁判で、スモールオフィスということもあり居住用と比べても使用状況に差がないとされ、ガイドラインが適用されたケースもあります。

一方で、ガイドラインを適用するのは望ましくないとされた判例もあります。

民法が適用されるのは契約日により変わる

施行前に契約された場合(2020年3月31日以前に契約)は、旧民法が適用されるため、注意が必要です。

民法よりも契約が優先

契約の自由の原則に基づき、お互いに了承しているのであれば、民法の規定よりも契約が優先されます。

なお、民法では原状回復について次のように明記されています。

第621条「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」

オフィスや店舗は、経年劣化・通常損耗も入居者負担とする契約が多い

オフィスや店舗などテナント物件の賃貸借契約・特約で次のように定め、経年劣化・通常損耗も含めて賃借人(入居者)負担とすることが多いです。

  • 原状回復がすべて賃借人の負担である例外規定を設けて、理由を記載する
  • 「経年劣化、通常損耗についても原状回復に含める」と明記する
  • 図面を添付し、原状回復の範囲を明確にする
  • 原状回復工事施工目安単価を含め、壁紙などの仕様(グレード)や製造中止になったときの代替措置まで詳しく記載する
  • 賃貸人・賃借人の修繕分担表を含める

原状回復工事の見積もりは高すぎる

業者が指定されている場合、最初に出された原状回復工事の見積もり金額は高いと思って間違いありません。

必ず下記をチェックしましょう。

  • 工事の区分(借主負担、貸主負担)をチェックし間違いがないか
  • 原状回復工事の範囲は契約書通りか
  • 養生範囲や資材が過剰になっていないか
  • 廃棄物の処理方法は適切か
  • クロス・カーペット・照明・ブラインドなどグレードアップしていないか
  • クロスなどの単価が適切か単価表を取り寄せて比較
  • 本来必要のない工事が含まれていないか
  • 可能なら、以前の入居者が行った原状回復工事の内訳と金額を出してもらい、今回の見積もりと比較

コンサルティングで原状回復費用を削減する

コンサルティングで原状回復費用を削減する

契約で業者が指定されているのであれば、市場原理が働きませんから、交渉は必須です。

しかし、交渉のテーブルが用意できたとしても、毎年のようにオフィスを移転するような企業でもない限り、下記の問題が出てきます。

  • 知識不足
  • 経験不足
  • 交渉期間・交渉時間の確保

専門家を交えないで交渉してしまうと、交渉の停滞や意図したように費用を削減できないことが考えられます。

また、退去日までに原状回復工事を終わらせて明け渡しをする必要がありますが、交渉がまとまらず工事期間にしわ寄せがきてしまうと、退去日までに工事が終わらず余計な費用が出てしまう可能性も否定できません。

原状回復工事費用を削減したいのなら、リスクを考慮し成功報酬型の原状回復コンサルティング会社に依頼するのがベストです。

なお、成功報酬型でない場合、事務所移転のトータル費用が高くなる可能性も否定できませんので、ご注意ください。

まずは、原状回復工事費用が適正かどうか、原状回復コンサルティング会社に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。

この記事のまとめ

原状回復工事の費用に差が出る理由は?

高額になる理由はいくつかあります。
大規模なビルに入居している、店舗・飲食店である、内装にこだわって入居工事を行った、等さまざまあります。
基本的に、入居時に費用をかけた場合は、原状回復の際も高額になりがちです。

原状回復工事はどこまで負担するの?

原状回復工事ではトラブルも多いため、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定め、2020年4月1日に施行された改正民法で明確化されました。
その中では、経年劣化・通常損耗は入居年数によって割合負担としていますが、オフィスや店舗などテナント物件では、テナント負担とすることが多いです。 オフィス移転で認識すべき原状回復工事のガイドラインと民法

原状回復工事費用を削減する為には?

まずは専門家の意見を聞いてみるのが良いでしょう。
オフィスの移転は頻繁に発生するものでもなく、どうしても、知識や経験が不足してきます。
専門家に相談し、コンサルティングを受けるのが良い選択になると思います。

この記事を書いた人

ディレクター 柳澤 英一郎

Leasing Innovationの設立に伴い参画。B工事のコンサルティング会社で経験を積み、3,000社以上の査定を行っており、大手監査法人の大規模統合移転の退去プロジェクト等の実績を持つ。

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