工事費高騰の現状と原因~どうする!?今後の価格交渉~OWNEDMEDIA

工事費高騰の現状と原因~どうする!?今後の価格交渉~

  • 2024.10.1
工事費高騰の現状と原因~どうする!?今後の価格交渉~

工事費が高騰している現状はほとんどの方がご存知だと思います。
では、実際にはどれくらい上昇しているのか、なぜ上昇しているかご存知ですか?
今回は、工事費の動向と高騰している要因についてご説明します。

建築工事コストの動向

資料出所:一般財団法人建設物価調査会 https://www.kensetu-bukka.or.jp/

こちらは東京における事務所RC造の建築費指数グラフです。これを見ると、2016年以降右肩上がりの状況が続いています。直近2024年5月の工事原価指数は129.9、前年同月比8%となりました。

建築工事コストの内訳は、労務コスト資材コストの大きく2つに分けられ、それらの価格上昇が建築コスト高騰に影響しています。
これから、労務コストと資材コストそれぞれの動向と上昇している要因についてご説明します。

労務コストの動向

資料出所:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001724088.pdf

こちらは公共工事設計労務単価グラフです。これを見ると、2024年度の労務単価は23,600円と、12年連続で上昇しており、今年は過去10年間で最大の上昇率となっています。

オフィス・事務所等の民間工事は、公共工事の2~3割増しの金額になることが多いため、28,320円~30,680円相当になっていると言えます。

これほどまでに労務コストが上昇している要因は何でしょうか?

労務コスト上昇の主な要因

  • 人手不足

労務コストが上昇している要因の1つは、人手不足です。建設業界では長年にわたり人手不足が課題になっています。1997年以降減少が続いており、2023年にはピーク時比70.5%まで減少しています。
(参考:https://www.nikkenren.com/publication/handbook/chart6-4/index.html#link02
また、就業者の高齢化・若年層の就職者低迷も課題の一つです。2023年には、55歳以上の就業者が約36%であるのに対し、29歳以下の就業者は約12%と、高齢化が進行しています。
(参考:https://www.nikkenren.com/publication/handbook/chart6-4/index.html#link03
そのため、
・就業者は徐々に減っている一方で、建設需要(職人需要)は高まっているため
・若年層の就業者確保するため
上記の理由で労務コストが上昇しています。

  • 働き方改革の推進

2024年4月から働き方改革により建設業界の残業の上限規制が施行されました。(通称「2024年問題」)
残業が規制されて、勤務時間が減ることによる給料の減少を防ぐ目的で労務コストが上昇しているとみられます。また、残業が規制されることによって、工期が延び、仮設費や現場管理費等も上昇しています。

資材コストの動向

資料出所:一般財団法人建設物価調査会 https://www.kensetu-bukka.or.jp/

こちらは東京における建設資材物価指数グラフです。これを見ると、直近2024年8月の建設総合指数は138.7 、前年同月比4.1%と資材コストの上昇が続いています。

資材コストが上昇している要因は何でしょうか?

資材コスト上昇の主な要因

  • 建設需要の高まり

2024年度の建設投資額は、前年度比2.7%増加し、約73兆200億円に達する見込みです。
建設投資額は6年連続で増加しており、建設需要の高まりによって、相対的に資材コストも上昇しています。
(参考:https://www.nikkenren.com/publication/handbook/chart5-1/index.html#link01

  • エネルギーコストの上昇

2020年以降の新型コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・ハマスの武力衝突をはじめとする中東情勢の不安定化により、原油価格が変動しており、日本は99%以上の原油を輸入に頼っているため、建設業界に限らず、日本経済全体に大きな影響を与えています。
財務省の貿易統計によると、直近2024年8月の原油輸入価格は、平均82,513円/㎘、前年同月比12.2%増加しています。
原油を資源としたエネルギーは、建設資材の製造や輸入、輸送に使用されることから、資材コスト上昇の大きな要因の一つとなっています。
(参考:https://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm

  • 円安

日本は世界各国から建設資材を輸入しているため、近年急速に進む円安により、相対的に資材コストも上昇しています。

まとめ

このように複数の要因が相互に作用し合って、建築工事コストは高騰しています。そして、建設需要が低迷しない限り、今後も価格上昇し続ける可能性が高いです。

オフィス工事の場合、発注者であるテナント様にとって、工事費の高騰は当然望ましくないですが、受注者である工事会社にとっても、工事原価が高くなると利益率が下がるため、大きな痛手となっています。そのため、これまで以上に工事費の値下げ交渉に応じにくい状況になっています。

そのような状況の中でも、弊社は工事見積に隠された無駄なコストを見つけ出し、適切な根拠、コミュニケーションを用いて減額成功していますので、高額な工事費でお困りの方は是非ご相談ください。

この記事のまとめ

この記事を書いた人

ディレクター 柳澤 英一郎

Leasing Innovationの設立に伴い参画。B工事のコンサルティング会社で経験を積み、3,000社以上の査定を行っており、大手監査法人の大規模統合移転の退去プロジェクト等の実績を持つ。

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