建て替え・取り壊しビルの退去事情 ~取り壊しビルの原状回復工事ってどうなるの?~
- 2024.3.12
前回に引き続き、建て替え・取り壊しビルの退去事情についてお話します。
皆様、ビルが建て替えや取り壊しになる場合、原状回復工事はどうなるかご存知でしょうか?
今回は、建て替え・取り壊しビルの原状回復工事について、弊社の減額事例も含めて、詳しくご説明いたします。
目次
建て替え・取り壊しビルにおける原状回復工事
建て替え・取り壊しビルの原状回復工事には、主に以下の4つのケースがあります。
1.原状回復工事が免除されるケース
その名の通り、原状回復工事(義務)が免除されるケースです。
交渉によっては、什器や雑ごみも残置したまま退去でき、その廃棄費用も賃借人負担で行ってもらえる場合もあります。
このケースは主に、賃貸人都合により退去しないといけない普通借家契約のテナントや、物件契約時に「原状回復工事は免除」という覚書を巻いた定期借家契約のテナントにおいて見受けられます。
2.解体工事のみ行うケース
賃借人は解体工事のみを実施し、その他の工事は免除されるケースです。
解体工事には、タイルカーペットや巾木、クロスの剥がしや、間仕切り壁の撤去、その他C工事による造作・設備等の撤去が含まれます。
主に定期借家契約において見受けられるケースです。
3.原状回復工事費用相当額での金銭清算になるケース
賃借人が工事を実施しない代わりに、賃貸人に工事費用相当額を支払うことによって、賃借人の原状回復義務の履行に代えるケースです。
ただ、費用は支払ったものの、実際には工事を実施しない場合もあり、トラブルになりやすいです。
(トラブル事例:https://www.retio.or.jp/info/pdf/114/114-126.pdf)
こちらも定期借家契約に多いケースです。
4.通常通り、原状回復工事を行うケース
取り壊しに関わらず、通常通り原状回復工事を行うケースです。
ただ、賃借人からすると、「ビルを解体するのに、新たに内装工事や設備工事する必要があるのか?」と当然に思うため、トラブルになりやすいです。
こちらも定期借家契約に多いケースです。
建て替えビルでの原状回復費用の減額実績
4のケースにおいて、弊社コンサルティングにより原状回復費用を減額できた実績をご紹介いたします。
概要
建て替え計画のあるビルにも拘らず、通常の原状回復工事の実施を要求されたことに対して、賃借人は解体工事のみの実施、もしくは原状回復工事費用相当額での金銭清算を要求
結果
原状回復工事費用相当額での金銭清算を前提として、工事範囲の縮小や出精値引きにより-37.6%減額
初回見積金額(コンサル前) | 10,982,000円 |
合意見積金額(コンサル後) | 6,850,000円 |
削減額 | ▲4,132,000円 |
削減率 | -37.6% |
減額アプローチ方法
①原状回復工事費用相当額での金銭清算
通常の工事完了によった債務履行ではなく、原状回復工事費用相当額での金銭清算へ変更しました。それにより賃貸人は、ビル解体工事とテナント区画の解体撤去工事を同時期に行うことができるため、工事費用を抑えられたり、各官庁への手続きが一度で済む等のメリットがあり、賃貸人は解約日までに工事を行う必要がない為、工事期間分の賃料が不要になったり、解約日まで営業を続けられる等のメリットがあります。
②工事範囲の縮小
仕上げ工事が免除になり、工事範囲は以下のみとなりました。
・タイルカーペットは撤去のみ
・壁はクロス剥がしのみ
・天井は補修のみ
※C工事で増設した設備(空調、照明等)や間仕切りの撤去跡がある部分については塗装
・OA床の一部補修
・天井・壁の開口部の復旧
・誘導灯、非常照明、感知器、非常放送スピーカーの復旧
③出精値引き
査定を元に設定した目標金額を提示し、その金額までの減額を求めたところ、追加で約130万円の出精値引きがありました。
まとめ
建て替え・取り壊しビルにおける原状回復工事は、契約形態やビルオーナーによって、原状回復工事の有無、工事内容、支払い方法が異なります。また、入居年数や賃貸借人間の関係性が影響する場合もあります。建て替え・取り壊しにも拘らず、原状回復工事の実施を要求された場合には、上記のように、相当額での金銭清算に変更・費用減額できる場合もありますので、お気軽にご相談ください。
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