オフィス移転に必要な原状回復。坪単価の目安や高額な見積りを減額する方法OWNEDMEDIA

オフィス移転に必要な原状回復。坪単価の目安や高額な見積りを減額する方法

  • 2022.5.11
オフィス移転に必要な原状回復。坪単価の目安や高額な見積りを減額する方法

オフィス移転する際に必要なのが、入居した状態に戻す原状回復です。

当記事では、原状回復の坪単価についてお伝えしますが、金額を鵜呑みにはしないでください。

退去するビルの状態、入居時に締結した賃貸借契約書及び特約の内容、賃貸中の物件の状態(部屋の状態)によって大きく差が出るからです。

原状回復工事の坪単価の目安(東京都)

  • 小規模オフィス:坪単価4万円~8万円
  • 中規模オフィス:坪単価8万円~10万円
  • 大規模オフィス:坪単価10万円~15万円

オフィス原状回復工事の平均的な坪単価

上記の単価は目安に過ぎませんし、金額に幅があるため目安にもならないかもしれません。

また、物件によっては坪30万円近くになることもあります。

事務所(テナント物件)の原状回復は、契約によって差があり相場は安定していないからです。

どうして、これほどまで金額差が出てしまうのか、ご説明させていただきます。

原状回復の単価に幅がある理由

原状回復の単価に幅がある理由は複数あります。

ハイグレードビルの原状回復単価は高い

ハイグレードビルの場合、下記の制約があり原状回復工事の単価が高くなりがちです。

  • 退去時に空調管理や電力管理のソフトデータ更新が必要になる
  • 入居中の他テナント・店舗に影響がないように、搬入搬出や工事時間が夜間や休日のみと決められている
  • 工事規模が大きく、二次請け、三次請けと多くの工事業者が入るため工事管理費が高くなる

逆に入退館システムがないビルであれば、その分の原状回復は不要ですので、単価は安くなります。

指定工事施工業者の存在

原状回復の単価が高くなる理由として有名なのが、指定工事業者の存在です。
ビルオーナー(貸主)側からすれば、信頼している工事業者に工事を任せることで、ビルの資産価値を保ち、入居中の企業・テナントからのクレーム、トラブルを回避するメリットがあります。
業者を指定するメリットが大きいため、入居工事、リフォーム工事、原状回復工事など、多くの工事について、業者を指定します。
テナント(借主)側からすると、工事費用が高額になりがちになるデメリットがありますが、入居中に他テナントが工事した際、問題が発生する可能性が少なくなるメリットも忘れてはいけません。

空調(エアコン)に注意

エアコンなど空調工事の単価も幅が出ます。

入居時にエアコンを移設した場合は、元の位置に戻す工事が必要になりますし、エアコンの使用状況によっては、補修や修理工事が必要になる場合があるからです。

タバコの煙がエアコンにこびりつくなどした場合に、補修や修理工事を指摘されることが多いので、ご注意ください。

エアコン同様に換気扇にも注意が必要です。換気扇やダクトの汚れがひどく、清掃だけでは復旧や再生ができないとされた場合、ダクトを含めて交換することになるからです。

内装の状態により大きく価格変動する

工事する場所の個数が増えればトータルとして高くなります。
一般的なオフィス物件の場合、最低限の内装はあるものの、間仕切り壁などはない状態で入居し、入居工事で会議室、役員室、サーバー室、部署ごとに部屋を区切るために、壁やドアを設置します。
手を加えた部分はすべて入居時点と同じ状態に戻す必要がありますから、工事箇所が多くなるほど、金額は高くなってしまいます。
さらに、営業用のモデルルーム設置などで水回りを変更・改修したりしている場合は単価が上がります。
逆に、ほとんど手を加えずにいた場合は、原状回復費用は抑えられます。

原状回復工事の範囲

「どこまで修繕する必要があるのか」によっても原状回復工事の金額は変わってきます。

例えば、契約書に「スケルトン状態まで原状回復」とあれば、壁や天井などを解体しスケルトン状態に戻す工事を施工することになります。

一般に、店舗・飲食店物件はスケルトンに戻すことが多く、オフィス・事務所物件は壁紙などがある状態まで戻すことが多いです。

原状回復工事の見積もりは9割方高額

原状回復費の見積

原状回復工事の見積もりは9割方高いと思っていただいて間違いありません。

業者が指定されている

先ほどもお伝えしたように、オフィスの原状回復の費用が高くなる理由として、工事可能な業者が契約で定められている点が挙げられます。

業者が指定されていれば競争は存在せず、高くなりがちです。

しかし、適正な金額を算出し交渉することで、費用を低減することが可能です。

工事相場が上昇傾向

原状回復工事に限らず、建設業界の工事費用は上昇傾向が続いています。

上昇傾向が続く主な原因のひとつに職人の慢性的な人手不足があげられます。

国も建設業の人材不足に手を打っていますが、2012年(平成24年)以降、一時的に過剰になった時期はあるものの、根本的な改善には至っていません。

今後も原状回復工事の単価は上昇傾向と考えられます。

公共工事設計労務単価 全国全職種平均値の推移

参照:日経クロステック『労務単価2.5%増で過去最高、国が相場先導する「官製賃上げ」』

見積の項目が詳細

原状回復の見積書は、多くの項目が並んでいます。

説明を受けてもわかりにくい項目もありますし、詳細になればなるほど単価が積み上がり、合計金額が高くなってしまいます。

負担する必要のない費用が含まれている

本来であれば、入居時の契約で原状回復範囲について細かく定めるべきなのですが、曖昧な部分があることも多いです。

曖昧な部分が多ければ、本来、負担する必要のない工事費用まで見積書に含まれている可能性も出てきます。

負担する必要のない部分かどうかは、賃貸借契約書や館内ルールと見積書を照らし合わせて判断していく必要がありますが、慣れていなければ非常に困難な作業となります。

オフィスの原状回復とアパートなど居住用物件の原状回復の違い

オフィスの原状回復と一軒家を含むアパートなどの居住用物件の原状回復は同じと誤解されることがありますが、実際は異なります。

契約としては同じ賃貸借契約ですが、テナント向けの場合は特約を設けて、原状回復について規定していることが多いからです。

オフィスのクロスの貼り替えは入居者負担

事務所、オフィス、店舗などの事業用物件(テナント物件)では、入居期間に関係なく通常損耗や経年劣化を含めて入居者(借主)の負担でクロスなどの貼り替えも行う契約となっていることが多いです。

一般的に原状回復とは入居した当時の状態に戻すことではなく、通常の使用で生じた損耗、経年劣化による変化を除いた部分と民法や原状回復ガイドラインで定められています。

なお、契約した日で対応する民法が異なりますのでご注意ください。

オフィスや店舗などの場合、通常の使用状況が入居者(借主)によって大きく変わるため、民法の規定よりも契約が優先されることをお互いに確認した上で、原状回復ですべてを入居時点の状態に戻す契約を締結することが一般的です。

しかし、賃貸借契約書や特約に明記されていないケースもあります。

明記されていない場合、通常損耗や経年劣化は建物オーナー(貸主)負担で原状回復することになる可能性もありますし、逆に入居者負担となる可能性もあります。

トラブルになる可能性が非常に高いので、弁護士の力を借りて訴訟などをする必要があるかもしれません。

アパートのクロスの貼り替えは大家さん負担

意図的に汚した、汚れを放置した、清掃を怠った、というような瑕疵がなければ、居住用として使用していたアパートのクロス貼り替えは大家さん(建物オーナー)の負担で行われます。経年劣化などは賃料に含まれているという考えです。

もし瑕疵が無いのに費用を請求された場合は、安易に支払わず国民生活センターや弁護士に相談するようにしましょう。

高すぎる原状回復費用を削減するなら

原状回復費を削減するには

オフィス・店舗の原状回復工事の単価はお伝えしたように非常に幅があるため、参考程度にしかなりません。

しかし、適正な金額を知り指定業者と交渉することで適正価格にすることが可能です。

賃貸借契約書で退去時の原状回復範囲を確認

どこまで原状回復が必要なのか、賃貸借契約書の入退去に関する条項や工事範囲を示す区分表を読み込みましょう。

契約によっては図面などが添付され細かく規定されていることもありますし、曖昧という場合もあります。

工事が出来ないと伝えた上で相見積もり依頼

適切な工事金額を知りたい場合は、工事ができないこと、ビルの工事ルールをしっかりと伝えた上で指定業者ではない業者に相見積もりを依頼する方法があります。

工事ができませんので、見積もり作成費用を請求されるかと思いますが、ビルのルールに沿った工事要件での見積もりを依頼することで、現状にあった工事単価などがわかります。

単価表などが入手できたら削減交渉ができますが、建設業界に明るくなければ思ったように削減ができないリスクがあることも考慮しておきましょう。

なお、指定業者を変更しようとされる方もいますが、ほとんどの場合、業者の変更はできません。

適正金額の査定から交渉までプロに依頼

原状回復の適正価格を査定しコンサルティングまでしてくれる会社に依頼する方法もあります。

原状回復のコンサルティング会社に依頼する場合は、相見積もりなどを取得し単価を調査する必要はありません。

ただし、専門家といえども原状回復費用が削減できず「原状回復費用+専門家への依頼料」の方が「原状回復工事お見積書」の金額よりも高くなってしまうリスクもあります。

トータル金額が高くなるリスクを避けるには、完全成果報酬型のコンサルティング会社に依頼する方法があります。

もちろん、料金体系をしっかりとチェックする必要はあります。

トータルで原状回復費用を削減したいのであれば、一度相談してみることをおすすめします。

この記事のまとめ

原状回復工事の単価は?

オフィス移転の原状回復単価は、一坪当たり4万円~15万円超と、非常に幅があります。
ビルのグレードや内装の仕様によって大きく異なります。
場合によっては、坪30万円などの工事費用の見積が出される場合もあります。

原状回復工事の単価に幅がある理由は?

原状回復工事の単価に幅がある理由はいくつかあります。
規模が大きなビルであればあるほど、関わる下請け業者が多くなってくるため、経費が重なり、結果として単価が高くなりがちです。
また、オフィスのエントランスなどを凝った内装にしていれば、解体して戻す範囲が大きくなるため、単価が高くなります。 原状回復工事の相場は坪4万円~30万円と差が大きい。見積もりの適正価格や減額方法は?

どうすれば削減できる?

高すぎる原状回復費用を削減するなら、知り合いの工事業者などに相見積もりを依頼するなどして、金額感を把握する必要があります。
ただし、ビルごとに工事に関するルールがあるので、ビルに関する資料を読み込む必要があります。
まずは、原状回復に関するコンサルティング会社に相談してみる事をおすすめします。

この記事を書いた人

ディレクター 柳澤 英一郎

Leasing Innovationの設立に伴い参画。B工事のコンサルティング会社で経験を積み、3,000社以上の査定を行っており、大手監査法人の大規模統合移転の退去プロジェクト等の実績を持つ。

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